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今回紹介するクルクミンは、一般の方にもおなじみの成分だと思います。クルクミンはウコン(ターメリック)に含まれている黄色の成分であり、普段からカレーなどのスパイスやハウス食品の「ウコンの力」などを通して口にされる方も多いのではないでしょうか。
クルクミンは数十年にわたり医学的作用が注目されており、様々な生理活性が明らかになっています。今回はクルクミンのがんにおける作用について紹介します。クルクミンは転写因子や、サイトカイン、接着分子、酵素などの抑制を通じて前炎症反応を抑制することで、がんの予防に役立っているのではないかと考えられています。(現在までその治療効果については研究段階です)。
・膵臓がんにおける研究
細胞レベルの研究(≒試験管内)ではクルクミンは膵臓がん細胞において活性が高く細胞内情報伝達系の重要物質であるNF-kBを阻害して増殖を抑制することが知られています。NF-kBは通常の膵臓細胞ではほとんど活性化されていませんが、膵臓がん組織では67%程度が活性化されているといわれています。 そのほかにもEGFR(上皮成長因子)の発現やERK1/2の活性を抑制して細胞増殖を抑えることやCOX-2を阻害して炎症を抑制することが示されています。また、クルクミンは抗がん剤のゲムシタビン(ジェムザール)やパクリタキセルやCOX2阻害剤のセレキシコブの感受性を高めることも報告されています。
動物レベルの研究では膵臓がん細胞を移植したマウスでの実験において、クルクミンの週2回の投与により、がんの増殖抑制や抗がん剤のゲムシタビンの効果を強めることが示されています。(人体においてこれらの効果があるかについては、現在までのところ証明されていません。)
・グリオーマにおける研究
グリオーマ(神経膠腫)は脳腫瘍の一種で脳に発生する「がん」とも言われる疾患です。治療法も少なく難しい疾患であることから既存の治療法に加え、栄養学的にサポートが行えないかなど様々な研究が行われています。細胞レベルの研究においてクルクミンは、 細胞内のシグナル伝達因子であるAkt/mTOR/p70S6K経路の抑制やERK1/2経路の活性化を通してオートファジー(細胞死の一種)を誘導、血管新生やグリオーマの浸潤と関連の深いMMPsの幅広い産生抑制、細胞周期の制御による増殖の抑制などが知られています。動物レベルの研究でも、グリオーマを移植した実験動物モデルにクルクミンを投与することで腫瘍の成長抑制やオートファジーの誘導が起こることが報告されています。(人体においてこのような効果があるかについては、現在までのところ証明されていません。)
・乳がんにおける研究
乳がんの15-25%程度は成長因子受容体であるHER-2 の過剰発現がみられると言われています。抗がん剤のハーセプチンはこのHER-2に対する抗体薬であり、HER-2結合することで、細胞内シグナル伝達経路であるPI3k/AktyやMAPKを阻害することで増殖を抑えることができることから、乳がん治療の第一選択薬となっています。
細胞レベルの研究ではクルクミンは乳がん細胞株の細胞増殖や生存率を抑制することが報告されています。また、ハーセプチンと共にクルクミンを加えると、ハーセプチン耐性細胞株のシグナル伝達を阻害することも報告されています。
乳がん細胞を移植した動物モデルではクルクミンの投与により腫瘍サイズが縮小することや、乳がんにも用いられる抗がん剤であるタキソールと組み合わせることで、より腫瘍サイズが小さくなることが報告されています。(人体においてこれらの効果があるかについては、現在までのところ証明されていません。)
・安全性
クルクミンは米国のFDAにGRAS認定されており、服用しても安全性が高いと考えられています。
※GRASとはGenerally Recognized As Safeの略式で、日本語で言えば一般に安全と認められた
という意味です。動物レベルの研究では体重1キロ当たり2.6グラムの長期服用を行っても長毒性による死亡は認められないという研究結果も出ています。クルクミンを一日あたり100-200mg摂取している地域ではいくつかのがんの発生が少ないとも言われているようです。
・臨床試験
ヒトにおける臨床試験も米国で数本行われています(治験番号: NCT00192842など)。
今後もクルクミンについて逐次情報を追加していく予定です。
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○参考文献
Nutr Cancer 2011
Int J Biochem Cell Biol 2009
Int J Biochem Cell Biol 2008
Evid Based Complement Alternat Med. 2012
Nat Rev Gastroenterol Hepatol 2010
2012.03.05 追記