2012年10月31日 (水)

ごあいさつ

このページの内容は、研究内容を紹介するものであり、その成分の効果を保証するものではありません。
また、健康食品の服用は治療の妨げになる場合もあります。
病気療養中の方はその服用について医師と充分に相談を行って下さい。

(サイト管理者について)
私の家系は「がん」に罹患する者が多く、父方の祖父を白血病、父を肺がん、母方の祖父と母親を膵臓がんで失くしています。親戚の多くも同様に「がん」に罹患しており、「がん」家系の典型です。私がいざ病気となった時や病気にならないための備忘録として、こつこつ更新したいと思います。また、この情報が普段あまりこういった論文を読まない方の参考になれば幸いです。免疫学を研究していたバックグラウンドを活かして、より新しいの研究状況などをレポートできればと考えています。ご理解いただける方は応援をお願いします。

2012年10月30日 (火)

がん化の機構(carcinogenesis process)

がんの予防や進展に対する対策には、がん化の要因の理解は必要です。がんの原因は様々であり、全てが一般論で説明できるわけではありませんが、研究論文からその概略を整理します。

・原因因子
がんは一般的に細胞の分裂増殖が制御不能になることで、凝集してできた腫瘍です。正常の細胞は「接触阻害」の機構があり隣の細胞に触れると増殖を停止しますが、がん細胞はその機構を失っており、増殖を続けます。がんの危険因子としては喫煙や肉食中心の食生活、重金属の蓄積、遺伝子の突然変異など家族性の因子によるものなどが知られています。

・多段階発がん説
現在提唱されている一般的な発がんの機構であり、正常細胞が3つの段階を経てがん細胞に変化すると考えられています。その3つの段階は①イニシエーション、②プロモーション、③プログレッションに分けられます。
①は正常細胞ががんの原因因子(イニシエイター)によってダメージを受けることで、細胞のDNA(遺伝情報などを含む核物質)に修復不能な変異が生じます。その結果として正常細胞はイニシエーション細胞となります。②はイニシエーション細胞が酸化や慢性炎症よるダメージ、正常細胞の発がんを誘発しない食塩や脂肪、生体ホルモンなど(プロモーター)による刺激などを受けて増殖し、前がん細胞となります。良性の腫瘍などはこの段階です③前がん細胞がイニシエーターやプロモーターによる刺激を受け続けることで、更なるDNAの変異が生じ、浸潤可能ながん細胞に変化します。がん細胞はさらに進むと転移も可能な細胞に変化していきます。

つまり、がんの発生・進展を防ぐためには(a)がんの原因因子などによる発がん機構の阻害、(b)酸化や炎症、腫瘍の成長の抑制、腫瘍細胞のアポトーシス(細胞死の一種)の誘導、(c)がんの進展に必要な細胞内の情報伝達シグナルを除外することで、腫瘍細胞がプロモーションやプログレッションの影響を受けにくくする、などの対策が考えられます。

2012年10月29日 (月)

抗がん剤に対する耐性の獲得(Mechanisms of chemoresistance in tumor cells)

がん細胞は抗がん剤などの薬物に対し、抵抗性をもつことが知られています。この機構を抑制することは、がん治療の効果を向上させる可能性が高く、興味深い研究対象です。この記事ではがんのもつ薬剤耐性メカニズムについての報告をまとめます。

薬剤の流出入の制御
抗がん剤ががん細胞に十分量取り込まれることは、その効果を発揮するのに重要なポイントです。抗がん剤に抵抗性を持つ細胞の一部は、抗がん剤を細胞内から吐き出すことでその抵抗性を獲得しています。薬物を排出するトランスポータータンパク質としてよく知られているのは、p-糖たんぱく質(p-gp)やMRP1、LRP、BRCPなどであり、がん細胞はこの発現を高めて抵抗性を獲得します。

薬剤の不活化
酵素の働きにより抗がん剤に化学反応を促し、がん細胞を殺す効果のない別の物質に変えることで、抵抗性を獲得することも知られています。がん細胞はグルタチオン(GSH)およびその転移酵素(GST)の発現を強化し、GSHを抗がん剤に結合させることで無力化することが知られています。抗がん剤のひとつである5-FUを分解するDPDという酵素も、一部のがんでは発現が上昇するといわれています。

DNA修復の促進
抗がん剤はがん細胞のDNAを傷つけることで、細胞増殖や生存を不可能にするメカニズムを持ったものが多くあります。一方、がん細胞はDNAを修復する酵素の働きを高めることで、抵抗性を獲得します。ERCC1はその働きを持つ酵素の一つとして注目されています。

成長因子の発現増強
EGFRは成長因子の受容体のひとつで、ここからの刺激は細胞の増殖や分化などのシグナルを伝えるのに重要な役割を果たしています。タルセバやイレッサなどの抗がん剤は、この受容体に結合し、シグナル伝達を阻害する薬剤です。がん細胞はこれに対し、EGFRを細胞表面に大量に発現することで、抗がん剤の効果を弱め、抵抗性を獲得します。

細胞死の誘導機構から回避
抗がん剤や免疫機構により誘導されたアポトーシス(細胞死)からの回避は、がん細胞の抵抗性の中でも重要視されています。がん細胞はアポトーシスを誘導するタンパク質であるp53の発現を低下させたり、アポトーシスを回避するタンパク質であるBcl-2やBcl-xL、XIAP、c-FLIP、survivinの発現を高めます。p53に関してはがん細胞の約半分で変異がみられており、この酵素の機能欠損は、細胞のがん化にかかわる重要なファクターでもあります。

2012年3月11日 (日)

イソチオシアネート(Isothiocyanates :ITC)

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ITCはキャベツやブロッコリーやわさびなどに含まれる辛味成分であり、消化器がんや肺がん、膀胱がんなどいくつかのがんに対する予防効果があることが疫学研究などにより示されています。今回はITCについての作用メカニズムについて御紹介します。過去の記事(がん化の機構)をみていただくと、理解の助けになると思います

・発ガン物質等の活性化を抑制
ITCは体内の代謝酵素であるCYP(シトクロムP450)のいくつかを阻害することが知られています。CYPは解毒など体内において重要な働きをしているものの、その一部にはがんの原因になりうる薬物や化学物質を代謝しそれらを真の発ガン物質に変えてしまうことも報告されており、ITCによるCYPの阻害が、細胞のがん化を抑制する可能性が示唆されています。また、他にもGST(グルタチオン転移酵素)やUGT(グルクロン酸転移酵素)などの発現を高めることも報告されており、がん原性物質など化学物質の排出を促進することで、がんの予防に寄与している可能性があります。

○参考文献
Food Funct., 2011

2012年2月28日 (火)

クルクミン(Curcumin)

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今回紹介するクルクミンは、一般の方にもおなじみの成分だと思います。クルクミンはウコン(ターメリック)に含まれている黄色の成分であり、普段からカレーなどのスパイスやハウス食品の「ウコンの力」などを通して口にされる方も多いのではないでしょうか。

クルクミンは数十年にわたり医学的作用が注目されており、様々な生理活性が明らかになっています。今回はクルクミンのがんにおける作用について紹介します。クルクミンは転写因子や、サイトカイン、接着分子、酵素などの抑制を通じて前炎症反応を抑制することで、がんの予防に役立っているのではないかと考えられています。(現在までその治療効果については研究段階です)。

・膵臓がんにおける研究
細胞レベルの研究(≒試験管内)ではクルクミンは膵臓がん細胞において活性が高く細胞内情報伝達系の重要物質であるNF-kBを阻害して増殖を抑制することが知られています。NF-kBは通常の膵臓細胞ではほとんど活性化されていませんが、膵臓がん組織では67%程度が活性化されているといわれています。 そのほかにもEGFR(上皮成長因子)の発現やERK1/2の活性を抑制して細胞増殖を抑えることやCOX-2を阻害して炎症を抑制することが示されています。また、クルクミンは抗がん剤のゲムシタビン(ジェムザール)やパクリタキセルやCOX2阻害剤のセレキシコブの感受性を高めることも報告されています。
動物レベルの研究では膵臓がん細胞を移植したマウスでの実験において、クルクミンの週2回の投与により、がんの増殖抑制や抗がん剤のゲムシタビンの効果を強めることが示されています。(人体においてこれらの効果があるかについては、現在までのところ証明されていません。)

・グリオーマにおける研究
グリオーマ(神経膠腫)は脳腫瘍の一種で脳に発生する「がん」とも言われる疾患です。治療法も少なく難しい疾患であることから既存の治療法に加え、栄養学的にサポートが行えないかなど様々な研究が行われています。細胞レベルの研究においてクルクミンは、 細胞内のシグナル伝達因子であるAkt/mTOR/p70S6K経路の抑制やERK1/2経路の活性化を通してオートファジー(細胞死の一種)を誘導、血管新生やグリオーマの浸潤と関連の深いMMPsの幅広い産生抑制、細胞周期の制御による増殖の抑制などが知られています。動物レベルの研究でも、グリオーマを移植した実験動物モデルにクルクミンを投与することで腫瘍の成長抑制やオートファジーの誘導が起こることが報告されています。(人体においてこのような効果があるかについては、現在までのところ証明されていません。)


・乳がんにおける研究
乳がんの15-25%程度は成長因子受容体であるHER-2 の過剰発現がみられると言われています。抗がん剤のハーセプチンはこのHER-2に対する抗体薬であり、HER-2結合することで、細胞内シグナル伝達経路であるPI3k/AktyやMAPKを阻害することで増殖を抑えることができることから、乳がん治療の第一選択薬となっています。
細胞レベルの研究ではクルクミンは乳がん細胞株の細胞増殖や生存率を抑制することが報告されています。また、ハーセプチンと共にクルクミンを加えると、ハーセプチン耐性細胞株のシグナル伝達を阻害することも報告されています。
乳がん細胞を移植した動物モデルではクルクミンの投与により腫瘍サイズが縮小することや、乳がんにも用いられる抗がん剤であるタキソールと組み合わせることで、より腫瘍サイズが小さくなることが報告されています。(人体においてこれらの効果があるかについては、現在までのところ証明されていません。)

・安全性
クルクミンは米国のFDAにGRAS認定されており、服用しても安全性が高いと考えられています。
※GRASとはGenerally Recognized As Safeの略式で、日本語で言えば一般に安全と認められた
という意味です。動物レベルの研究では体重1キロ当たり2.6グラムの長期服用を行っても長毒性による死亡は認められないという研究結果も出ています。クルクミンを一日あたり100-200mg摂取している地域ではいくつかのがんの発生が少ないとも言われているようです。

・臨床試験
ヒトにおける臨床試験も米国で数本行われています(治験番号: NCT00192842など)。


今後もクルクミンについて逐次情報を追加していく予定です。
この記事を応援して下さる方はリンクから商品のご購入をしていただけると幸いです。

○参考文献
Nutr Cancer 2011
Int J Biochem Cell Biol 2009
Int J Biochem Cell Biol 2008
Evid Based Complement Alternat Med. 2012
Nat Rev Gastroenterol Hepatol 2010

2012.03.05 追記

2012年2月24日 (金)

リモネン(D-limonene)

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リモネンは柑橘類モノテルペンの一種で、オレンジ、レモン、マンダリン、グレープフルーツなどシトラスオイルに含まれる成分です。細胞レベルの研究ではリモネンは細胞分裂の抑制効果を示すこなどが報告されています(現在までその治療効果については研究段階です)。

・結腸がんで前がん病巣の進展を予防
結腸の異常腺窩巣(crypt foci)は前がん病変や結腸がん進展のバイオマーカーとし知られています。動物レベルの研究では、リモネンは化学物質で誘導されるこの異常腺窩巣の形成を抑制することが報告されています。この作用はリモネンが細胞分裂に重要な役割を果たすオルニチン脱炭酸酵素のはたらきを抑制することによるものと考えられています。このことからリモネンは結腸がんの形成や進展を予防する効果があるのではないかと考えられています。ただし、ヒトでの毒性や長期投与の際の安全性などについては、現在までのところ示されていません。

・リモネンと抗がん剤の組み合わせ研究

細胞レベルの研究ではドタキセルとリモネンの組み合わせ効果が報告されています。その研究では前立腺がん細胞株においてリモネンがドタキセルに対する感受性を強めることが報告されおり、リモネンが活性酸素やアポトーシス関連分子に対する感受性を高めることによって細胞死を誘導しやすくしているのではと考えられています。ヒトにおける効果や安全性は現在まで証明されていませんが、抗がん剤投与時のサプリメントとして効果がある可能性があります。

・臨床試験
ヒトにおいては初期乳がんにおいてリモネンの上乗せによる進展予防効果などについて臨床試験が行われています(NCT01046929)

今後もリモネンについて逐次情報を追加していく予定です。
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○参考文献
J Oncol. 2012

オメガ‐3 脂肪酸(ω-3 fatty acid)


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オメガ脂肪酸はヒトの体内で合成できないことから必須脂肪酸と呼ばれています。中でもオメガ-3脂肪酸は不足しがちな脂肪酸として知られています。オメガ-3脂肪酸からはEPA(エイコペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が体内で合成されることから、健康食品としてご存知の方も多いのではないでしょうか。オメガ-3脂肪酸は魚油や亜麻仁油などに多く含まれることが知られています。

・炎症の抑制

細胞レベルの研究ではオメガ-3脂肪酸やEPAはTNFのような炎症性サイトカインの産生を抑制することが知られています。

・血管新生の抑制

細胞レベルの研究では様々ながん細胞株でEPAの添加により細胞の増殖や浸潤が抑制されることが報告されています。動物レベルの研究でもEPAや魚油の投与により、腫瘍の縮小や数の減少、転移の抑制などがみられることが報告されています。このメカニズムについては詳細は解明されていませんが、EPAが前炎症性の免疫応答を抑制することで、血管新生を防ぎ、がんの成長を抑制するのではないかと考えられています。

・がん悪液質の抑制

がん悪液質はがんの進行に伴う病態です。特に膵臓がんや胃がんでは悪液質が深刻な状況をもたらします。悪液質はがんの分泌する物質によって、慢性炎症や代謝異常、免疫機能の異常などを起こし、肉体的に消耗が続く状況です。この進行により筋肉を破壊され、そこから得られる栄養分でがんが成長し、本人はやせ細っていってしまい病状を悪化させていきます。この悪液質の予防に炎症抑制効果のあるEPAが役立つと考えられており、EPAを含んだ栄養ドリンクが医療メーカーのアボット社からも発売されています。

・脂肪酸のバランスとがん
現代人の食事はオメガ-3脂肪酸の不足しているとよく言われています。オメガ-6脂肪酸とオメガ-3脂肪酸のバランスの良い摂取が最適といわれており、オメガ-6脂肪酸の過剰摂取は心疾患や乳がん、結腸がんなどのリスクを高めるといわれています。

・オメガ-3脂肪酸と膵臓がん
細胞レベルの実験では作用メカニズムは判っていないものの、オメガ-脂肪酸は膵臓がん細胞株の増殖を抑制するという報告がされています。一部の報告ではオメガ-3脂肪酸は細胞周期の調節を行うことで増殖を抑制することが知られています。また、膵臓がんではアポトーシスの回避機構を持つことで、抗がん剤に対して抵抗することが知られており、その機構に重要な役割をもつシグナル伝達分子であるNF-kBが関わっているといわれています。
ヒトにおける臨床試験では膵臓がん治療にオメガ-3脂肪酸の投与は加えることで、体重の増加などがんに対する抵抗性の改善がみられることが報告されており、今後の更なる研究に期待が持てそうです。

今後もオメガ-3脂肪酸について逐次情報を追加していく予定です。
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○参考文献
Arch Surg. 2010


2012年2月16日 (木)

緑茶抽出成分(EGCG、ECGなど)

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緑茶成分は昔からがんの予防や進展のリスクを減らす可能性があると考えられ研究が行われています(あくまで研究段階であり、人体における効果は証明されていません)。その中で注目されている成分はエピカテキンガラート(ECG)やエピガロカテキンガラート(EGCG)です。これらは緑茶に含まれる渋味成分であるカテキン(ポリフェノール類)の一種です。

・発ガン物質の活性化を抑制
細胞レベルの研究ではECGは体内の代謝酵素であるCYP(シトクロムP450)のいくつかを阻害することが知られています。CYPは解毒など体内において重要な働きをしているものの、その一部にはがんの原因になりうる薬物や化学物質を代謝しそれらを真の発ガン物質に変えてしまうことも報告されており、ECGによるCYPの阻害が、細胞のがん化を抑制する可能性が示唆されています。

・細胞傷害からの抑制

ECGやEGCGは抗酸化物質として知られており、活性酸素の産生を抑制したりすることで細胞がダメージやストレスを受けるのを防ぎます。これががんの予防に役立っているともいわれています。

・炎症の抑制

慢性炎症や感染は発ガンに繋がることが知られており、その抑制はがん予防にも効果があるものみられています。炎症の過程ではNO(一酸化窒素:活性酸素と同じフリーラジカル)やプロスタグランジンの産生を誘発するiNOSやCOX-2、前炎症性サイトカインであるIL-1やIL-6、TNF-αが体内で産生されますが、これらは発ガンやその進展にも直接的/間接的に関わっていることが報告されています。
細胞レベルの研究ではECGはCOX-2などの活性の抑制やプロスタグランジンE2の産生の抑制を行うなど炎症の機構を抑制することで、がんの予防にはたらく可能性があると考えられています。

・細胞周期(Cell-cycle)の調節
細胞は増殖の際にはDNAを複製し、その後細胞分裂します。この一連の流れは細胞周期と呼ばれています。細胞レベルの研究においてはECGは前立腺がん、膵臓がん、結腸がん、肝臓がん、肺がん、乳がん、メラノーマ、舌がんの細胞株の増殖を抑制することが報告されています。別の報告ではECGは細胞周期のG1期(DNA複製準備期)で細胞周期をとめることやPDGFなどの細胞成長因子による細胞増殖の抑制を行うことも報告されています。

・アポトーシス(細胞死)の誘導

アポトーシスは「プログラム細胞死」とも呼ばれ、細胞間のシグナル伝達により誘導される細胞死のことです。これは生物の発達や恒常性の維持に重要なメカニズムでとして知られており、胎児の手足の水かきがアポトーシスを起こし、5本の独立した指が形成されるというのは有名なお話です。
また、アポトーシスは疾病から体内を守るためにも働き、傷害を受けた細胞や不要な細胞、増殖の不適切な細胞などを除去などの役割を担っています。
一方で、がん細胞はこのアポトーシスから逃れる機構を持ちます。たとえば抗アポトーシス分子としてはたらくRasやBcl-2を大量に発現したり、p53のようなアポトーシスに関連する分子の発現を抑制したりすることが報告されています。細胞レベルの研究ではECGはBcl-2の発現を抑制やp53の発現を促進することが報告されていること、別の研究ではECGはがん細胞の活性酸素やTNF-αなどにより誘導されるアポトーシスからの回避を抑制することも報告されており、これらの機構ががんの予防に繋がる可能性があります。

・がんの転移機構に対する働き
がんは元々がんの発生した場所から離れた組織に移行し、その場所で増殖し転移巣を作ることがあります。転移の進展は、がん細胞の周りの微小環境の影響を受けると言われています。これらに関わる分子としてマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)やEGFなどの成長因子、細胞間をつなぐ接着分子などが、挙げられており、この発現の調節が、がんの転移の予防に役立つ可能性があります。

・臨床試験

ヒトでは乳がん、前立腺がん、卵巣がん、膀胱がんなどにおいて予防効果や標準治療に上乗せした際ので生活改善効果や延命効果などが検討されている(NCT00917735、NCT007218907など)

今後も緑茶抽出成分について逐次情報を追加していく予定です。
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○参考文献
Food Funct., 2011

2012年2月 7日 (火)

レスベラトロール(Resveratrol)

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レスベラトロールは赤ワインや赤ブドウの果皮などに多く含まれる物質でポリフェノールの一種です。ポリフェノールは抗酸化作用のある物質として知られ、その老化防止や心疾患の予防効果などに注目が集まっていますが、がんの領域についても研究が行われています。がん細胞においてはシグナル伝達経路を阻害することで増殖を抑制したり、抗がん剤の感受性を高めてその効果を増強する可能性について研究が行われています(あくまで研究段階であり、人体における効果は証明されていません)

・細胞内シグナル伝達の抑制と細胞死の誘導抑制
細胞レベルの研究ではがん細胞に作用し、シグナル伝達物質のNF-kBを阻害することで、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の産生を抑制し、がんの血管新生(≒がんの栄養路の確保)を抑制すること、がん細胞に多く発現しているサバイビンの発現を抑えることでアポトーシス(細胞死)を誘導することなどが報告されています。また、レスベラトロールには、NF-kBやSTAT3など 様々なシグナル伝達を阻害し、がん細胞が抗がん剤に耐性をつけることを妨げ、抗がん剤の効果を高めることも報告されています。

臨床試験
ヒトにおいては標準治療との上乗せにより治療効果があるかどうかについて臨床試験が行われています(NCT00455416など)

今後もレスベラトロールについて逐次情報を追加していく予定です。
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○参考文献
1)Mol Nutr Food Res. 2010
2)Oncol Rep. 2010
3)Ann N Y Acad Sci 2011

2012.3.10 一部追記

2012年2月 5日 (日)

イソフラボン(Isoflavone)-ゲニステイン(Genistein)


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イソフラボンは植物が広汎に持つフラボノイドの一種であり、大豆や大豆タンパク質に多く含まれる成分です。イソフラボンのひとつであるゲニステイン(genistein)は女性ホルモンのエストロゲンに分子構造が似ていることなどから、そのはたらきについて研究が進んでいます(あくまで研究段階であり、人体における効果は証明されていません)。

細胞レベルの研究ではゲニステインはエストロゲン受容体(ER)に結合し作用することから、ER依存性のがんに対する研究が進められてきました。ER依存性の乳がん細胞において、がんの増殖抑制効果が発表されたこともありましたが、濃度によっては増殖を促進する結果も報告されており、ホルモン性の乳がんにおいては、摂取はリスクがあるともいえる成分です。
一方でERを使わない別の経路を使ってがんの増殖の抑制やアポトーシス(細胞死の一種)を誘導することも報告されています。ゲニステインは細胞内のシグナル伝達に重要な働きをもつNF-kBの活性化を抑制することで、がんの増殖を抑制しているものとみられています。

動物レベルの実験ではゲニステインが化学物質で誘導された前立腺がんや乳がんの進展を抑制するという報告もあります。その他のがんでも転移を抑制するという研究結果も出ており、化学療法との組み合わせて治療に使うことができないか、研究が進んでいます。

ヒトにおいては化学療法との併用による効果など米国で臨床試験が数本行われています(治験番号:NCT00410631など)。

今後もゲニステインについて逐次情報を追加していく予定です。
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